記憶 ―流星の刻印―
そんな事させない。
私は慌てて蓮に怒鳴った。
「――駄目よ!殺させない。止めて、蓮!……見つからなきゃ良いのね!?人に危害は加えさせないようにするし、家畜も襲わせないようにするわ!」
私は蓮の前に立ち上がると、両手を広げて視界を遮った。
「…は?…するわ…って…」
「――決めたの!この子、飼うの!私が面倒を見るわ。」
「……………」
「……何よ…?」
風が吹く。
木々を揺らす葉がこすれる音。
本当に今日は風が強いわね。
「……うん、空耳かな…」
「――…飼うわっ!」
いつの間にか聞こえてくるのは葉の音だけになっていて、私は慌てて獣に駆け寄った。
「…あぁ大変!この子、気を失っちゃったみたい。早く治療しなくちゃ…。蓮!その上に羽織ってる服をくれない!?この子を包んで家に連れてくから!」
「…あ~げ~は~…。そんな、無茶苦茶なぁ…」
「いいから!早く脱いでよ!」
私は半ば無理矢理に蓮の服を脱がせ、気を失った獣をそれに包むと、胸にぎゅっと抱く。
村の方向へと駆け出した。
風が強い。
木々のざわめきが、
私を余計に焦らせる。
道を駆ける私の衣装が、
うるさい程に鈴の音をたてていた。