記憶 ―流星の刻印―


そんな事させない。
私は慌てて蓮に怒鳴った。


「――駄目よ!殺させない。止めて、蓮!……見つからなきゃ良いのね!?人に危害は加えさせないようにするし、家畜も襲わせないようにするわ!」

私は蓮の前に立ち上がると、両手を広げて視界を遮った。


「…は?…するわ…って…」

「――決めたの!この子、飼うの!私が面倒を見るわ。」

「……………」

「……何よ…?」

風が吹く。
木々を揺らす葉がこすれる音。
本当に今日は風が強いわね。


「……うん、空耳かな…」

「――…飼うわっ!」

いつの間にか聞こえてくるのは葉の音だけになっていて、私は慌てて獣に駆け寄った。


「…あぁ大変!この子、気を失っちゃったみたい。早く治療しなくちゃ…。蓮!その上に羽織ってる服をくれない!?この子を包んで家に連れてくから!」

「…あ~げ~は~…。そんな、無茶苦茶なぁ…」

「いいから!早く脱いでよ!」


私は半ば無理矢理に蓮の服を脱がせ、気を失った獣をそれに包むと、胸にぎゅっと抱く。

村の方向へと駆け出した。

風が強い。
木々のざわめきが、
私を余計に焦らせる。

道を駆ける私の衣装が、
うるさい程に鈴の音をたてていた。

< 12 / 175 >

この作品をシェア

pagetop