記憶 ―流星の刻印―
母さんの残してくれた、
私の家なのに、
数日前まで住んでいた場所なのに、その平穏な日々が遥か昔の事の様に感じた。
数日前に蓮と美玲さんと食卓を囲み、虎白の様子を見て騒いでいたあの時間が、懐かしく感じた。
今は、
同じその場所に、
重々しい空気が流れている。
「…そうかい。朱雀の力を前にして、この肩当ては力を無くしたのかい…。ふん、私の妖術も落ちたもんだね…」
以前と変わらないババ様の態度は、せめてもの救いだった。
変わらない物、
それもまた、在るんだと。
「…跳ねっ返りが、やけに『しおらしい』じゃないか…」
「…………。」
この場にいる、
太磨も花梨さんも、朱理も…
ババ様と私のやり取りを、黙って見守ってくれていた。
相変わらずに眠る虎白は、太磨の膝に預けた。
「……何から、話そうかね」
「……全部」
答えになっていない返事。
順番なんて、
もう…、つけられない。
「…あぁ、そのつもりだよ。かなり酷だが、全て…、受け止めておくれ…」
…酷…?
これ以上に酷、ですって…?
私の心臓は、
静かにザワザワ騒いでいた。
『8年前』?
そのキーワードが頭から離れない。