記憶 ―流星の刻印―


「…お前には、何も教えてなかった。意図的に、だよ。世間知らず…、そうさせたのは私だよ。世間と無関係で居て欲しかったんだよ。恨むなら、私を恨むんだね…」

ババ様の話を、
私はただ静かに聞くしか出来なかった。

全てを聞いてから、
判断するしか無かった。

ババ様の深い蒼色の衣を、飽きる位に見つめていた。


私が生まれた日の事を、
ババ様は鮮明に覚えていた。

風が強い日だったそうよ。

風は嵐の様に吹き荒れ、
赤土に覆われた大地から舞い上がる成分は、空を一層朱く染めていた。

一際に「朱い日」、
それが私の生まれた日。


『――龍の巫女様!!龍湖がっ!!龍神を祀る龍湖の様子が、只ならぬ波風を立てっ…』

『…ふん。風が強いからか…、はたまた…、龍神様がこの子の誕生を祝って下さっているのか…』

血相を変えてババ様を呼びに来た村人が目にしたのは、産声をあげる私を抱くババ様の姿。


『……その子は…?』

『あぁ、美々の子だよ。よく似ているだろう…』

『――…ではっ!!』

『…あぁ。やがて龍神様は、この子に宿るだろうね…』


…生まれた日から、
それは、決まっていたの…?


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