記憶 ―流星の刻印―


『…この子もまた、力ある妖術師。しかし、未だ「刻印」は出ていない…。』

『……では…』

生まれた時には、
龍神が宿る印は無かった。
じゃあ…


『…あぁ…。刻印は、未だ…美々の身体に在る。』


……母さんに…?

母さんも同じだったの…?
だから、私なの…?

古傷だと思っていた刻印。
これは、いつから私に在る…?

思い返せば、それは…


『…美々の身体が尽きた時、龍神様はやがて子供に移るだろう…。遠い未来の話だ。今は只、この子の誕生を祝おう…』


そう…
母さんが、死んだ時。


名は、揚羽。

他でもない母さんが、
私に付けた名前。

風の様に、
自由に、
空を飛ぶ…、蝶々の名前。


そう願った。
きっと、母さんは願ったのね。
私の幸せを…


秘められた龍湖の村で。

決められた、
運命の渦の中で。


そして、
世間から隠した。

私の存在を…。

だから、
国に出生を申請しなかった。


『…この子には、普通の生活をさせてやりたい…』

今なら、
その意味が分かる。

母さんは、自分が長生きをするつもりだったの。
死ぬつもりは無かったのね。

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