記憶 ―流星の刻印―
初めて私に会った時、
花梨さんは太磨に確認した。
『…1つ確認なんだけど、揚羽ちゃんの父親って、まさか太磨ちゃんじゃないわよねぇ?』
どうして、
そんな事を聞かれたのか、
全然分からなかった。
『……じゃあ、やっぱり…?やっぱり、そうなのね?』
『……そうだ』
私の父親は、病気で死んだ。
そう聞いていた。
――…優しい、嘘。
父親は、居ない。
元から存在しなかったの。
「美々は、単身でお前を身ごもった。言うなれば、お前の父親は…龍神様…。そういう事になる…」
ババ様は、龍の巫女。
世間から秘められし龍湖の里で、代々この運命の連鎖を護ってきた家系。
そして、私は…
その連鎖、そのもの。
「…8年前、お前の母である美々が亡くなった時から、その刻印はお前に移った。だが、刻印はぼんやりと薄く…、覚醒をしてはいなかった。」
覚醒…?
私は今、覚醒してしまったの?
母さん…、
どうして死んだんだっけ…。
あの日は確か…
家に帰ると、ババ様が居て…。
『不幸な事故だった』と…。
それしか、聞いていない。
「…母さんは、どうして死んだの?昔は、事故だと信じるしか無かった。」