記憶 ―流星の刻印―
創世記の話を元に、
昔の誰かが造った石碑…?
「…それで、問題となっている『星を渡る術』ですが…。裏面の文章が、あの気違いさんを生んでしまった訳です。」
大地が溶け
道が示されし時
我らの罪は消える
失われし星の記憶を
我らの胸に
星を渡り
楽園へ還る日を願う
道は
この地に眠る
「…という訳で、具体的な事は何1つ。『氷上という過酷な地に生まれた苦行に負けず、幸せな未来を願いましょう』『この氷が溶ける日を待ちましょう』という只の励ましにしか僕は思えませんけどね。」
「…そう…なのかしら」
失われた星の記憶、
星を渡り…、
それも只の例え…?
「――そうですよ!!それを創世記を元にした一部の例えから『星を渡る術』が記されているなどと…!!馬鹿馬鹿しい事を誰かが言い出して!!……揚羽さん?」
興奮していた朱理が、
ふと私の様子を気遣った。
「………ぇ?」
気が付けば、全員が…
目を丸くして、
私に注目していた。
「……ぁ。あれ?」
何?どうして?
――泣いていた…。
大粒の涙が、
沢山、零れていた。
「…僕は分かります。こんな馬鹿馬鹿しい理由で、親を殺されたんですからね?」