記憶 ―流星の刻印―
太磨と、私。
2人で寝静まる部屋をこっそりと抜け出して、
「ふふ、何だか悪い事をしているみたいね?」
なんて、
ヒソヒソと声を潜めて、
「じゃりじゃり」と自分たちだけの足音と、夜鳥の鳴き声がする林の中を抜けた。
すぅ…と、
心地良い風が通り抜ける。
その風が来た方向へ。
「何だか…小さな子供が、初めての冒険をしている時みたいね?」
なんて…私が言うと、
太磨は息だけを漏らして、呆れた様に笑っていた。
視界が開けると、
そこは見慣れたはずの、
『母さんが眠る』湖…。
薄朱色の、
龍神を祀る『龍湖』…。
私は、もう知っている。
この場所こそが、
「4つ目の星屑」が堕ちた場所なんだという事を…。
この場所が、
私たち「草原の地」の起源。
「…あら、…着いちゃったわ。短い冒険だったわね?」
ずっと家の中で難しい話をしていたものだから、開放的な湖の空気に、私は思わず大きな深呼吸をしていた。
釣られた太磨も大きな背伸び。
「…………。」
風に揺れる…
湖畔の、白い百合の花。
「…真夜中でも、結構…視界が良いのね…?」
「あぁ…。龍湖の朱色が、ぼんやり周りを照らすんだよ…」
「…ふぅん…」