記憶 ―流星の刻印―
私が黙ると、
辺りは静かだったわ。
私が黙ると、
太磨も喋らないの。
きっと、大人だからなんだわ。
「……はぁ」
白い百合を目に留めながら、
私は腰を下ろして、草の上に足を投げ出した。
ここへ来れば…、
母さんの事を、何か整理出来ると思ったのよ。
考えられると思ったの。
でも、だめ…。
まるで現実味が無い。
「…ねぇ、太磨。氷上の主に…、私の存在はバレちゃったのかしら…」
四獣を宿す者同士は、
その存在を感じ取る事が出来ると…、確かそう言っていたから…。
「……どうだろうな」
後ろを振り向くと、
腕を組んで立ったままの太磨が、首を傾げていた。
「……ヒドいわね。普通は『大丈夫だよ』って励ます所じゃないの?」
「…はは、そうか。でも、曖昧な嘘はつけねぇな?」
嘘はつけないの?
それは、本当かしら。
『不器用な男だね』と…、
確か花梨さん経由で、ババ様も言っていたわね。
「…私も母さんみたいに…殺されちゃうのかしら…。こんな夜中に単独で出歩いちゃマズイわよね…?」
「龍湖の里は、龍の巫女様が結界を張ってる。それに、俺も居る…。殺させやしねぇよ…。」
「…ふふ、そうね…?」