記憶 ―流星の刻印―


今は、
『嬢ちゃん』が嬉しい。

ただの『小娘』が嬉しいの。
私は何も変わっていないもの。


「……良かった!!」

「……何が」

何にも良い事は無いだろう、と太磨が表情を歪ませた。

確かに、状況は悪い事ばかり。


「太磨の本心が聞けて、よ。せっかく『良いオジサン』に昇格していたんだもの…」

「……そりゃどうも。」

ふん、と…
ふてくされる表情に、
私は笑みを漏らしたわ。


この人は私を裏切らない。

嫌味も憎まれ口も、
ただの大人の意地悪で…、
きっと心を許してくれてる証拠だわ。

信頼していい、
裏の無い人だと確信した。


「…安心したら、ちょっとだけ眠くなったみたい…」

ふぁあ…と小さな欠伸。
こんな状況でよく欠伸なんて出るわね、と自分に少し呆れたけれど。


「…虎白坊ちゃんの特等席、お貸ししましょうか?我が姫…」

そう意地悪な声を出して、自分の膝をトントンと叩く太磨。


「…あら、気が利くじゃない」

私はすぐに頭を預けた。
上から降りてくる呆れ笑い。


「…嬢ちゃん、あんまり考えすぎるなよ?昔から聞いてた俺だって、やっとなんだから…」

「……うん」

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