記憶 ―流星の刻印―


「…いきなり色々詰め込み過ぎだ…。すぐに理解出来る内容じゃない。」

「……うん」


「周りがどう言おうと、その身体に龍神が宿ってようと…、嬢ちゃんは、嬢ちゃんなんだ…。今までの自分も忘れるな…」

「………ん」

母さんの事を聞いてから、
あれだけ泣けなかったのに、

涙が、零れた。


私の顔は湖の方向を向いていたから、太磨にはバレていないと思った。

私は泣いていない。
そう分かるように、
ちゃんと返事だってしたのに。


「………ふ…」

静かに降りてきた、
太磨の太い指に、
私の涙は拭われていた。

その優しさに、
余計に泣けてしまうわ。


「……本当に、太磨が『父さん』だったら良かったのに…」

ふと思った事を口にした私。

父親は龍神。
そう例えられたわ。
私に甘えられる父親は居ない。

返ってきたのは、
お馴染みの優しい呆れ笑い。


「…おいおい。年の差12個で『父親』は勘弁してくれよ…」

「じゃあ、やっぱり『良いオジサン』ね…」

心地良い、
優しい空気が流れる。

虎白の特等席。
気持ちが落ち着いて、
本当に瞼は下りてくる。

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