記憶 ―流星の刻印―


虎白の叫ぶ内容は、こうよ。


『――…うわぁあぁぁんっ!!起きたら、揚羽も太磨も居ないぃぃっ!!置いていかれたぁ~っ!!やだぁーっ!!』

『僕が寝てばっかで役に立たないからぁぁっ!?だから邪魔なのぉっ!?うわぁぁんっ!!』

『揚羽ぁあぁ~!!太磨ぁあぁ~!!どこ行っちゃったのぉぉっ!?置いてったぁーっ!!ヒドイ~っ、やだぁーっ!!』

まぁ。
…そんな事ばかり。

あまりの大音量に、
私たちが帰って扉を開いた事さえも、誰にも気付かれなかったわ。


「……ただいま…」

呆れた様に私がボソッと呟くと、

――ピタッと、
鳴き声は止まった。


『…あ、あげ…あげ…揚羽ぁ』

涙を溜めた虎白の瞳と、
私の目が合う。
後ろに居た太磨の姿も目に入ったみたい。


『…たいま…太磨ぁ~。帰ってきたぁーっ…』

急に弱くなった鳴き声に、
その場に居た皆が目を丸くしていた。


「…別に、置いて行ったりしてないわよ…。本当に弱虫ね…あんた。」

『――ぅわぁぁんっ!!』

虎白は急に駆け出して、
私の膝下に飛び付いたわ。


「……何?…それで鳴いていたの?虎白ちゃん…」

驚いて口をポカンと開けたままの美玲さんに、私は頷いた。

< 166 / 175 >

この作品をシェア

pagetop