記憶 ―流星の刻印―
「…さぁて、虎よ。足を怪我して、湖へ続く道端にいたところを揚羽に拾われた…。それは分かったよ。」
ババ様の言う事に、
私も、膝の虎白も頷いていた。
「…じゃあ、どうして渓谷に棲むお前が、この草原の地に居るのかね…?」
ババ様の事情聴取。
それは丁寧に1つ1つ順序を追っていた。
「…どうやって来た?4つの大地を隔てる…あの高い山を越えた訳でもなかろうねぇ?」
そんな弱っちい体1つで…と、
ババ様の瞳も言っていた。
その鋭い瞳に映されて、
虎白は居心地悪そうにオドオド、モジモジしている。
蓮や美玲さんまでも、じっ…と虎白に注目するもんだから、何だか虎白が気の毒になってきたわ。
『…覚えてないよぉ…』
「覚えてないんですって。もういいじゃない、ババ様。絶対に鷹とか鷲に捕まった間抜けな方法よ?自力で山を越えられる訳ないし。」
ババ様は渋い疑いの顔。
何を心配しているのか…。
私は言葉を付け足した。
「…この子と言葉が通じてみて…、改めて思ったけど…、予想以上にヘタレよ?獰猛とは思えないくらいよ?」