記憶 ―流星の刻印―
1・草原の踊り子
1・草原の踊り子
ねぇ、母さん。
今日もこの村は平和だわ…
「四彩華」の東は、
誰もが羨む緑豊かな土地。
赤土の大地には広大な草原。
薄朱色の湖。
所々に昔の名残の湿地帯。
惜しげもなく生い茂る緑色の木々は、他の4つの大地には珍しい物だと聞いている。
その大自然に囲まれた穏やかな小さな村で、
私は生まれ育った。
ごめんね、母さん。
不満があったとすれば、
「自由」の範囲が狭かった事。
もっと、
自由に羽ばたきたかった。
私は、揚羽。
風の様に自由な…
蝶々の名前を持つ、
只の村の踊り子だった。
私にこの名前を付けたのは、
母さん、貴女だわ。
だから、許して。
自由に羽ばたくチャンスを、
私は狙っているの。