記憶 ―流星の刻印―
寝転んで見上げた空は、
何時になく一際に朱だった。
この国は赤土に覆われた大地が広がり、その成分が空の大気に舞い交じる。
今日みたいに風が強い日には、一際に空の朱色は濃くなった。
「…やだ…。私ったら、寝ていたみたいだわ…。そろそろ帰らなきゃ、蓮が心配するわね…」
涼しい風に、
まるで急かされる様に私は吹かれて、目を覚ます。
泥臭い草の上に寝転んだままポツリと独り言を済ますと、起き上がろうと身をよじった。
「…もう遅い。心配したよ…」
「……あら、蓮。来てたの…」
まるで私が起きるのを待っていたかの様に枕元に座り込む蓮は、何か文句を言いたそうに溜め息をついた。
体を起こすと、
身に着けていた蒼い踊り子の衣装が、静寂な湖の畔にリン…と音を立てた。
「…何かあったんでしょ…。揚羽は、何かある度にここに逃げるからね…」
「あら、何も無いわよ?ちょっと気を休めに来ただけよ。寝ちゃったから遅くなったの…」
「…嘘だよね」
彼は、蓮。
私の兄貴分に当たる人物で、幼い頃から長い時を一緒に過ごして気が知れている。
私の白々しい嘘を見抜く事は、彼の得意技。