記憶 ―流星の刻印―
「いやぁ、助かりましたよ。有り難うね、旦那っ。」
そう私たちの前方で、馬を操りながら笑顔をこちらに向けるお爺さん。
決して整ってはいない狭い街道で、溝に車輪がはまり、立ち往生していたこの馬車。
そこへ通り掛かりの私たちが追い付き、太磨がお爺さんに声を掛けた。
状況を把握した太磨は、いとも簡単に「ひょい」と車輪を押しただけ。
…に、私には見えた。
「いやいや、こっちこそ乗っけて貰えて助かったよ。悪いね、爺さん。」
「お互い様だよぉー。行く方向が同じってだけさぁ。」
お爺さんの馬車の荷台に乗って、このまま砂丘の地まで運んで貰える事になった。
人助けをして、気に入られて。
太磨は世の中を上手く渡れるタイプの人間なんだと思うわ。
あぁあ、悔しい。
また太磨の株が上がった。
…見なさいよ。
虎白のキラキラした眼差しっ。
「しかし凄いねぇ、旦那。子供とはいえ、虎を従えてるなんてさ?その虎の首のは、契約の首輪だろう?」
「…あぁ、まぁ…」
太磨は言葉を濁した。
その理由は、私が太磨を睨んだからなのだけど。
虎白は、私のペットよ!!と。
契約の首輪は、「妖術師」にしか国への申請が出来ない。