記憶 ―流星の刻印―
お爺さんは、
太磨を妖術師だと思ってる。
だから、いとも簡単にお爺さんの馬車を軌道に戻せたし、虎白も懐いてるのだと…、
…ふ、誤解だらけねっ。
そう騒ぎたいところだけど、
私も馬鹿じゃないから。
そうゆう事にしておいた方が、何かと都合が良い事も分かっているの。
ここは太磨に花を持たせてあげてるって訳よ。
妖術師でもない「か弱い私」が、子供とはいえ虎を野放しに旅をしている。
それは、お爺さんも安心出来ないでしょ?
私は、太磨の年の離れた妹。
妹は大人しく、荷台の隅で膝を抱えていてあげるわ。
荷台には、縛られた麦の穂が沢山載っていて、草の香りに随分癒やされる。
「しかし、珍しいね?この草原の地で。白い虎は、渓谷の地では神聖な生き物だろう?」
「…あぁ、元々は迷子なんだよ。この虎の坊ちゃんは。」
にゃっ
『ぼっちゃん!!』
…もう、いちいち突っ込む気にもならないわ。
太磨は、虎白を何度もそう呼ぶし、虎白もそう呼ばれる度に喜ぶし…。
…って、
「……えっ!!神聖な…生き物だったのっ!?」
膝を抱えていた私が、そう顔を上げると、太磨はお得意の呆れ顔だった。