記憶 ―流星の刻印―


あぁ、失敗。

『無知にも程があるぞ』と太磨の表情が言っているわ。


「……何よ。」

「…妹は、箱入りに育ってね。身内の恥をさらすようで申し訳ないが、ちょっとこの場を借りて…歴史の勉強をさせて貰うよ、爺さん。」

反抗的な私の瞳を無視して、太磨は嫌みったらしくお爺さんにそう言った。

声をあげて笑うお爺さんに、私の頬が膨らんだ。



太磨の話は、
この世界に伝わる「創世記」から始まったわ。

大昔のこの地に、
遥か空から「5つの星屑」が流れ落ちた話。

世界は、5つ目の星屑が作った高い山に隔たれて、4つの異なる環境に分かれたって…


「…馬鹿にしてるの!?それ位は知ってるわ!!でも、ただの言い伝えよっ!!」

「うるせぇな、騒ぐな。ちゃんと聞けよ。…見ろ、虎白は良い子に聞いてるぞ?」

にゃ
『聞いてるぞっ?お勉強の時間だもんねっ。揚羽は怒りんぼで悪い子だねぇっ?』

「…………っ」

すみませんねっ、
静かに聞いてあげるわよ。

虎白にまでそう言われたんじゃ、もう勝ち目は無いわ。

あぁ、麦の穂が良い匂い。

私は無駄に穂を触り、その匂いに安らぎを求めていた。

< 58 / 175 >

この作品をシェア

pagetop