記憶 ―流星の刻印―


なるほどね?

太磨が虎白を「坊ちゃん」呼ばわりしていたのにも、少し頷けたし。

ババ様が虎白を殺さずに、渓谷の地にわざわざ届けるって言い出したのにも頷けた。


「…少しは勉強になりましたか?無知な妹君?」

「――む。でも、龍神もそうだけど、ただの昔の言い伝えよ。それで?これから通る砂丘の地には、朱雀とやらが沢山居るって訳?博識なお兄様?」

嫌みに嫌みで返す。
太磨の口元がピクッと動いて、少しだけ八重歯が覗いた。


渓谷の地に、白い虎が生息している事は知っていた。
神聖だとは思わなかったけど。

じゃあ同じ様に、
朱い鳥が沢山空を飛んでいる?
そんなのは聞いた事はないし。


「……確か、朱雀の血を引く末裔が、砂丘では権力を握っているんだよな?爺さん。」

太磨はお爺さんに話し掛けた。
自分じゃ分からないから助けを求めたのよ、絶対。


「…んー、そう聞いてるねぇ?わしも草原の地の端っこの村に住んでるから、あっちの事は詳しくないが…。ただ、朱い鳥は見た事があるよ?」

「――えっ!?…まさか沢山?」


「いやいや、1羽。ここ何十年は、自分の村から砂丘の地の境まで、この麦を運ぶ仕事をしていてね?」

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