記憶 ―流星の刻印―
普通に考えたら逆なのよね。
治安が悪いのは、権力者の目が届かない国の外側であるはずなのに、中心部の方が悪いだなんて。
朱雀の末裔とかいう権力者、
そのお家の内部が荒れているのかしら。
「…詳しく知らないが、色々あるみたいだよ?国境の関所も、最近は厳しくピリピリしちまって…。仕事がやりにくくてかなわないよ…」
お爺さんはそう言って、
溜め息混じりに力無く笑っていた。
関わりたくないわね。
何とか、やり過ごしたいわね。
そう思っているのは太磨も同じだったと思うわ。
私たちは無言で瞳を合わせていた。
国境の関所か…。
何事も無ければ良いんだけど。
第一の心配は、そこ。
あまり納得してないけど、
渓谷の地で神聖とされる白虎。
すんなり通れるかしら。
更には、虎白の契約の首輪の申請者は、ここには居ないババ様になっている訳だし…。
そんな事を考えている内に、
関所は目の前まで迫っていた。