記憶 ―流星の刻印―
「…どうして、そう気が強いんだ。嫁の貰い手がつかないよ?もう嫁にいっても可笑しくない年なんだからさ…?」
「――結構よっ!」
まるで母親の様な小言。
面倒見が良いのは助かるけれど、最近は本当に口うるさくて困るわ。
「…またぁ…そう突っぱねる…。揚羽に幸せになって欲しいんだよ。分からないかなぁ?僕の兄心が…」
「気が強いのは母親譲りよ!それに私の幸せは誰かに嫁ぐ事じゃないわ!私は揚羽よ。これからも名の通りに自由が性に合ってるの!」
「はいはい…。美々さんにソックリだよ。その外見はね。いくら気が強いって言っても、美々さんはもっと穏やかだった。」
「……む」
蓮の言葉に、
私は口を尖らせて黙り込んだ。
『美々』、
それが今は亡き私の母の名前。
数年前に亡くなった母に代わり、蓮が色々と私の面倒を見てくれている。
母もまた蒼い衣装がよく似合う評判の高い踊り子だった。
その母に憧れて、
私もその道を選んだ。
言動、立ち振る舞い、
優しく気高く、自由で…
その生き方に魅せられていた人も多く、私も目標としているのに…、
母と比べられては黙るしかなかった。