記憶 ―流星の刻印―
『最初から、こうしてよ!!』
という私の言葉を予測しての切り返し方。
唇を尖らせる私に、
太磨は言葉を補足した。
「…それにな?これから会う所長ってやつが、面倒な奴で。本当は会いたくなかったんだよな~…」
あら、
珍しく、太磨が弱気。
「…あいつの相手するのは疲れるんだよ。だから、俺に休息が必要だった。そういう理由で許してくれるか?」
太磨が苦笑い。
しかも『許してくれるか?』ですって…。
ちょっと「可愛いじゃない」と、オジサン相手に思ってしまったから…、自己嫌悪だったわ。
廊下の窓の向こうは、
初めて目にする「砂丘」が広がっていた。
黄色い砂で出来た凹凸が、
遥か遠くまで続いていて、
「…わぁあぁ~…」
『…ひゃあぁあぁ~…』
私と虎白の興味は窓の外に向いたのだけれど、太磨だけはブツブツ言いながら廊下の正面を見て歩いていた。
案内されたのは、
立派な応接室だった。
そこにも大きな窓があり、
私たちは窓の外の砂丘に夢中だったけれど、太磨は椅子に腰掛けたまま、沈んだ顔をしていたわ。
何だか…
心の準備をしているみたい。
後から思ったわ。
私も準備しておけば良かったって、後悔よ…