記憶 ―流星の刻印―
花梨さんは笑った。
多分…、
私を笑ったんだと思う。
「……太磨ちゃんの書いた書類がなかなか通らなかった理由は、それなのよ?揚羽ちゃん。」
「……?…あ、虎白の申請書?首輪の契約者が、ババ様の名前だから…」
ババ様は妖術師な訳だから。
でも、
ここには居ない訳で…。
どっちみち通れないっていう事じゃない。
「……これが、虎白くんの申請書。見て御覧なさい?」
「――かっ…花梨っ!!」
もう色々聞いちゃったし、
何をそんなに焦っているのか、太磨は依然と叫んでいた。
私は花梨さんの片手から申請書を受け取ると、その内容を目で追っていった。
種類:白虎
性別:雄
名:虎白
契約者:揚羽
「……契約者…」
契約者は、妖術師のみ。
だから、
関所を通過する為に、太磨が「嘘」を書いた申請書なんだと思った。
「……揚羽ちゃん、貴女は知らされてはいなかった。でも、もう知らないといけない。知らないと、危険も予測出来ない。」
「…は?だって、これは…」
太磨が勝手に書いた「嘘」であって…
「…貴女は『妖術師』なの。」
花梨さんの表情は真剣だった。
すぐに太磨を見たけれど、
否定をしてはくれなかった。