好きな人は、




――――――――――……





「なつこちゃん!」



翌朝、モヤモヤして眠れなくて寝不足かつ不機嫌なあたしを昇降口で待っていたのは、ユニフォーム姿の潤くんだった。


暗色の制服姿の生徒でごった返す中、白いユニフォームな上に背の高い彼はやたらと目立つ。




「おはよー潤くん朝練おつかれー。」


ちなみに昨日はデートおつかれー。なんてイヤミを言いたくなったあたしは、自分で言うのも悲しいけれど心の狭い人間だ。



少し眉の角度が下がり気味な彼は、躊躇するように口を開く。



「…ごめん、昨日一人で大丈夫だった?帰り……」

「え、なんで潤くんが謝るの。」

「いや、俺がちゃんと待ってなかったから……」

「………」




潤くんはすまなさそうな…例えるなら雨の中捨てられている仔犬のような顔をしてあたしの表情を伺う。




……あ、心配してくれてる…。




なんてすぐにキュンときて浮かれる、単純なあたし。ほんと情けない。



しかし今日は、そんなあたしの思考を、昨日のイチャつく2人の映像が遮った。





「……別に一緒に帰る約束なんてしてなかったんだから、気にしなくて良いよ。」



心にもないイヤなセリフを言ってしまった、と気付いた時にはもう遅い。

「ありがとう」とか「大丈夫だよ」とか笑顔で言えたら可愛いのに。




「それに、実は昨日で補習終わったんだよね。だからもう、心配しないで。」




作り笑顔をしながら飛び出した言葉は、彼の優しさを突き放すようなものばかり。




気持ちと行動の矛盾に耐え兼ねて、じゃあチャイム鳴るから、とあたしは早足で彼の横をすり抜けた。






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