好きな人は、

溢れる気持ちと恐怖心






そのまま、何事も無かったかのように歩き続けること10分ちょい。



閑静な住宅街に差し掛かったところで、トボトボと歩いていた足のつま先を揃える。





「……何してんの。」



そう少し大きめの声を出した。


どこからも返答はなく、あたしはゆっくり踵を返す。

そしてもう一度、彼の目を見て聞いた。




「潤くん、何してんの?」





目線の先には、自転車を押しながら一歩足を踏み出した状態で固まっている、私服のジャージ姿の潤くん。



そんな彼は、まばたきを数回して後ろを振り返り辺りを見回す。

いや、キョロキョロしてるけどアナタしかいないよ、しかもあたし"潤くん"って言ったよ。



すると彼はぎこちなく笑った。



「あ、なつこちゃん。偶然だね。」


「………………。」





10分前、目にしたのはコンビニのガラスに映ったあたしの背後。


自転車を押しながら時折物陰に隠れるようにしてあたしの後ろを歩く潤くんと、その様子を不審そうに見る通りすがりの人たち。




その姿は、まさにストーカー。






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