好きな人は、
「なんであたしの後付けてくるの、自転車乗ったら良いのに。」
「…………………………え?」
え?じゃないよ、こんな涼しいときに汗かいてるけど何それ、冷や汗かな?
「いや、俺はたまたま…その、あの……」
ジーッと彼の目を見てると、目があった途端すぐに逸らされた。
きっと嘘が吐けない彼は、これから嘘をつこうと必死なんだ。
慌ててる顔も可愛いなー………なんて。
「やっぱり後つけてたんだ。」
ちょっとからかってみると、彼は更に慌てた表情。
「あの、あれ、掃除機のゴミ吸いとったら溜める袋みたいなヤツ!あれ買いに行った帰りなんだけどコンビニに無くて………」
…………主婦か。
ていうかコンビニなら家から徒歩3分の近いのがあるじゃん。
もう、色んな意味で嘘ってバレバレだよ。
「………なんで自転車押してるの。」
「……えっと、……風が強くて……」
「………………………」
今日くらいの風強く感じたら、冬になったら潤くん吹っ飛ばされるよ。
必死になって考えた末の言い訳があまりにも悲しすぎる。
でも可哀想だからこれ以上何も聞かないでおこう。頑張ったね、潤くん。
「……一緒に帰ろっか、あとちょっとだけど。」
「うん!」
うわ、なにこの顔かわいっ。
彼の急に明るくなった愛くるしい笑顔に、思わず鼻血を心配して鼻を押さえたあたしは末期かもしれない。