好きな人は、







なつこちゃん?と、心配そうにあたしの顔を覗き込む彼。


優しい声に、胸が締め付けられる。





「…嫌なわけないじゃん………」


思わず漏れ始めた本音は、止まらなかった。



「昨日早く終わったから野球部終わるの待ってようと思ったのに、潤くんマネージャーの可愛い子とイチャつきながら帰ってるしその事でモヤモヤしてたらなんか朝から心配してくるし嬉しかったんだけど虚しかったっていうかぶっちゃけヤキモチっていうか、それなら別に一緒に帰ってくれなくて良いって拗ねてたっていうか………」




マシンガンのように口から飛び出してきたほぼ告白のような言葉は、あたしの顔を少しずつ赤くした。



何いってんだろうあたし、恥ずかしい。


潤くんの様子を伺うと、ポカンとしながらあたしを見ている。



カーッと熱くなる顔を背け、帰り道を眺める。




「……じゃ、そういうことで。」


家までダッシュすれば3分。
……逃げ切れるか?



俯いて顔を隠しながら、あたしは潤くんの自転車のカゴからカバンを取り、勢いよく片足を踏み切った。







……が、肩を掴まれる。


しばらくもがいたものの、あたしは仕方なく振り向いた。



「……なんでしょうか。」

「待ってたよ。」

「……………はい?」

「本当は春の間は部活7時までなんだけど……職員室に部室のカギ取りに行ったとき、なつこちゃんが居残りって聞いて……待ってた。」


恩着せがましく言ってる訳じゃないよ、と彼は恥ずかしそうに頭を掻く。


「偶然を装わないとおかしいかなって思って…部活は8時までって嘘吐いた。」

「…………………」

「昨日は…なつこちゃん居残り終わるの8時くらいかなって思ったから……途中で引き返して、待ってた。戻ってきた時には、なつこちゃん帰ってたけど……」



潤くんはあたしの肩を掴んでいた手をスッと放した。






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