好きな人は、
だから今度こそ、家までダッシュする。破裂しそうな心臓の為にも。
そう決めて再び逃走体勢に入った。
……が、次は二の腕を掴まれる。
このドキドキは潤くんのに対してじゃない、最近お肉が付いてきている二の腕を掴まれているからだ、と自分に言い聞かせ、潤くんと目を合わせたまま深く息を吸った。
「……まだ、何かあるの…」
「…マネージャーの子とイチャついてたのは…客観的には事実だけど……」
そこまで言った後、彼は少し俯き、唸る。
それはそれは、すごく悩んでいるような表情で。
思わずどうしたの、と声をかけようとすると、彼は息を吐きながら顔を上げた。
「…俺のほんめーは、なつこちゃんだけですから。」
わかった?と。
聞かれたあたしは、もちろん思考停止。
唯一働いていた反射神経により、彼が手の力を抜いた途端、あたしは家までダッシュしていた。