好きな人は、
靴を履き替え、いくつもの校舎を抜け、辿り着いたのはグラウンド。
呼吸を調えながら、用具倉庫の隣に設置された青いベンチに腰を下ろした。
首筋や額に汗がつたうのを感じれば、優しい風がそれを冷やし、体をもじんわりと冷やしてくれる。
そのままぼーっとして、野球部のミーティング風景を眺め。
十分ほど過ぎた頃、数本のバットを抱えた潤くんが通りかかり、あたしの姿を見てぎょっとした。
「え、あ、あれ、なつこちゃん?何でここに?薄暗くて気づかなかった……っていうかいつからいたの、びっくりするよ…」
「おつかれさま。」
「え?あ、うん、ありがとう。」
お互い俯き加減で話すあたし達の横を野球部の人達が何人か通り過ぎ、間もなくグラウンドはあたしと潤くんの二人きり。
少しの間沈黙が続き、あたしはそれを遮るために小さく深呼吸して顔を上げた。
「潤くん、昨日言ってくれたこと……あたしのこと好きっていう風に思っちゃって良いのかな。」
「…う、うん。恥ずかしいからあんまり掘り返さないで欲しいな……」
薄暗い中でも、潤くんが照れているのは頭を掻いている姿を見ると伝わってくる。つい笑ってしまったあたしを見て、潤くんら困ったような目であたしを見た。