好きな人は、






もちろん、居残りさせられるほどのバカだと認識されたのは悲しいけど、「一緒に帰ろ」のお誘いにあたしのテンションはプラマイゼロ、むしろプラス。



15年以上の付き合いになる彼に、あたしは幼なじみ以上の感情を抱いているわけで。

こんなことがあるなら居残りも悪くないなあ、なんて思ってしまう自分がいる。

ムフフ、とにやけながら更にモチベーションを上げるために大好きなレモン飴を口に投げ入れた。








――――――――………






「ありがとー、ほんと潤くんのお陰だよ。」

「どういたしましてー。」



月明かりの下、好きな人と肩を並べる現在の時刻は9時10分前。

あの後、潤くんの協力で驚異的な速さで終わったプリントは、無事にタケちゃんに提出できた。


まぁ、寝ていたロスタイムがあるから「遅い」って1分説教されたけど。




「潤くん、こんなに遅くなっちゃって大丈夫?」

「平気平気、今日はたまたま早く練習終わったけど、普段は8時までだから。」

「うわー、大変だね。」

「なつこちゃんも、今週は大変だね。」



ぐさり、と居残りを指す潤くんの言葉があたしの胸に突き刺さる。
きっと彼に悪気はない。その証拠に、今あたしには最強のにこにこスマイルが向けられている。



潤くんは昔から底抜けに優しい。
いつも今みたいな癒しオーラ全開の笑顔。


思春期とか関係無く異性のあたしに対して、なつこちゃん、なつこちゃん、と変わらず接してくれている。

普通だったら、下の名前で呼ぶなよテメー、とか言われちゃってるのかもしれない。良かった潤くんが良い人で。もし潤くんがグレちゃったら、あたし地球を滅ぼす自信ある。





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