好きな人は、
10年以上前になる。
幼稚園児のあたしが落ちたのは、一生モノの恋だった。
「あたし、これから勉強頑張ってみようと思う。」
「…へ?う、うん。」
あたしの言葉に彼は少し拍子抜けた顔をする。
そりゃそうか、いきなり勉強とか言い出したから。
「放課後、勉強する。」
「う、うん、頑張って…」
「そうやって。」
自分で自分の言葉を止めて、今日何度目か忘れてしまった、深呼吸。
上昇中の体温を、また優しい風が冷やしてくれる。
静まれ、心臓。
ゆっくりまばたきをして、あたしは潤くんの暖かい目を見つめた。
「これからは、あたしが潤くんのこと待ってても良いかな。」
……つ、伝えた。
結局心臓は静まってはくれなかった。
もちろん、今も。
目の前の潤くんはぽかんとしていて、もしかして伝わってないのかな、と急に不安が襲ってきた。
う、まずい。
気まずさを感じて下を向くと、ふと体を何かで包まれた。
それは紛れもなく彼の腕で。
落とした目線もそのままに。
瞬きを何度か繰り返すと、自分が今置かれている状態がやっと理解出来てきて。
つま先から頭のてっぺんまで、ドキドキで真っ赤になっていってる気がした。