好きな人は、
「―――………っていう夢を見た。」
「きもい。」
目の前には、ドン引きした表情の三木先輩。
ハシで摘んだ卵焼きをポロリと落とす。
あれ、表情が今朝の夢とだいぶ違うなあ。
甘い声でわたしの名前を呼ぶ先輩はいずこへ。
本当、現実って厳しい。
「三木先輩、お陰でわたし今朝から胸がドキドキし過ぎて破裂しそう。どうしたら良い?」
「死ねばいいと思うよ。」
「ひ、ひどい。」
彼はポテトサラダを一口で頬張りながら、フェンスの向こうを指差した。
…わたしの頭が正常ならば、ここは屋上。
……飛び降りろってか。
キレイなバラには棘があると言う。
そして、三木先輩というバラにも毒舌という棘があるわけで。
初めは堪えたけど、何度も何度も刺されているうちにもう慣れた。
今は、その一言一言さえもトキメキの対象。慣れってこわい。
だから気にしないもん、ふふん、と笑って見せると、三木先輩は「…変態」と言って緑茶を口に流し込んだ。