好きな人は、
先輩とお弁当とわたし
「………まっず。」
「え。」
場所はいつもの屋上フェンス横。
三木先輩は真顔でそう吐き捨てた。
彼が口にしたのは、鶏の唐揚げ。
ちなみに、毎日毎日コンビニ弁当じゃ体壊しちゃうよ、と思ったわたしが作ってきたお弁当のオカズの1つ。
それをまずいと言われて、雷直撃。とりあえず、どうまずいのか聞いてみる。
が、逆に聞き返された。
「……麻衣、コレ何入れたの。」
「…え、えっと、唐揚げ粉が足りなかったから塩と砂糖でかさ増しを……」
「………………」
間もなく、三木先輩から黒いオーラが醸し出され始めた。
うわ、怒ってる。やっぱ砂糖と塩の組み合わせは悪かったか。
いつも通り変わらぬ甘いマスクが余計に怖い。
だから三木先輩の握り拳がパキッと音をあげたことには、気付かないフリだ。
「その発想有り得ないから。」
「ご、ごめんねごめんね。食べなくて良いから…」
「いや、勿体無いから食うけど。」
言って、残りの唐揚げを口に押し込んだ。
…三木先輩、男前過ぎる。涙で景色が歪んできた。
先輩はその後も、時折複雑な表情をしながらお弁当を食べ進める。
「ん、卵焼きはうまいよ。」
「ほ、ほんと?」
「唐揚げに比べたらだけど。」
もしかしてもしかしなくても、今三木先輩はわたしを慰めつつ誉めてくれているんだろうか。
だったら、かなりツンデレ入ってるけど感激しすぎてまた視界が滲む。
「三木先輩、わたし明日からずっと卵焼きオンリーのお弁当作るよ!」
「コレステロール上がるからやめて。」