好きな人は、
「俺は、受験生なの。」
「知ってるよ」
「もう秋だし、出来れば昼休みも勉強に回したい。」
わかる?と先輩はキレイな瞳でわたしの顔を覗き込み、優しい口調で聞いた。くっはぁ、やばいよそんな顔、反則だよ…………
………って違う、そんなことじゃなくて。
「屋上で勉強したら良いじゃん、わたし静かにするよ。」
昨日だって大人しくしてたじゃん。
わたし、バカだし空気読めてないときあるかもしれないけど、三木先輩の邪魔とかは絶対しない。
言ってみても、先輩は首を横に振るだけだ。
「それじゃダメなんだって。」
「なんで?」
「なんでも。」
なんだなんだ、"なんでも"って。意味がわからない。
三木先輩って、こんな理屈もへったくれもないアバウトなこと言う人だったっけ。
人のこと言えた義理じゃないけど、子供みたいだ。
「………やだ。」
「ワガママ言わないでよ。」
ふぅ、と先輩の口から深い溜め息。
あれ、今わたし面倒くさい女扱いされてたりするのかな。
……だとしても、イヤなものはイヤだ。自分の気持ちはとにかくぶつける。これこそがわたしの唯一の取り柄。
「…やだ。なんで屋上じゃダメなの。」
「友達とかに聞きたいことあっても聞けないでしょ。」
「昼休みじゃなくても良いじゃん。」
「もう決めたことなの。」
「………じゃあ、もうお弁当あげないよ。」
「………うん」