好きな人は、
終わり方はわからない
――カランコロン
喫茶店のドアを開けると、懐かしい雰囲気の音がした。
もわもわとしたタバコの匂いに包まれながら、三木先輩の姿を求めて奥へ、奥へ。
そして一番隅の席に、彼の姿を発見。
いつものハデ色パーカーはどうしたのか、紺のジャージに身を包み、目印のような金色のフワフワの髪は黒のニット帽に覆われていて。
普段とギャップのありすぎる地味な格好…しかも最後に会った2、3時間前の昼休みのはずなのに服装がガラリと変わっていたので直ぐには気づかなかった。
「三木先輩お待たせ。午後の授業サボったの?」
「うん。なんで分かったの。」
「制服じゃ無いじゃん。家帰ったの?」
「うん、暇だったし。」
あっけらかんとした先輩はわたしに席を勧めて、「何飲む?」とメニューを手渡してくれた。
ちなみに悩んだ結果わたしが先輩に向けた表情は、ムスッとした顔。
だって、もう一度昼休みの件考え直して欲しいし。
わたしが拗ねてたら、少しは気を傾けてくれると思ったから。
「…勉強するとか言ってたくせに授業サボるなんて、変なの」
ボソッと呟くと、三木先輩は"聞こえません"という顔でウエイターのおじさんを呼び、勝手にわたしのミックスジュースを注文した。
わたしパイナップルジュースが良かったのに、という言葉は自分で作り出した"少し起こってるんだよオーラ"が崩れそうだったので呑み込む。
そんなわたしの代わり、というように、口を小さく開いたのは先輩だった。