好きな人は、
「麻衣、ごめんな。」
「え」
あまりにポツリと言ったので、聞き流してしまいそうだった。
そのせいでマヌケな声が出てしまった口を思わず閉じる。
「でも、やっぱりもう屋上には行かない。」
先輩は追い討ちのごとく言葉を重ねた。
あれ、なんか手が震えてきた。おかしいな、まだ冬はちょっと先なのに。………なんて、現実逃避に走って余計なことを考え始める自分が悲しい。
「…どうしてもダメなの」
「うん」
なんの間も無しに頷く彼にはわたしの頼みを聞き入れる気は無いのだと悟り、思わず溜め息。
先輩が意外と頑固者だということは知っていたけど、やっぱり虚しい。
「…三木先輩は、いいんだね」
「……なにが?」
「…別にわたしに会わなくても」
わたしは会いたいのにさ、という言葉がこの後続くっていうこと、先輩は知ってるのかな。
知ってて欲しいんだけど。っていうか毎日のように伝えてきた筈だけど。