好きな人は、
コトン、とミックスジュースがテーブルに置かれた。
伝票と引き換えにウエイターが去り、それと同時に先輩がゆっくりと言葉を吐き出す。
「麻衣はさ。…ちゃんと同級生の友達作りなよ」
グラリと。
視界が、揺れた。
目の前の先輩は、真顔だ。
落ち着いているように見え、震えているようには思えない。
……震えているのは、わたしだ。
カタカタと震えるこの手ではグラスを持つことは出来なさそうだから、テーブルの下で強く強く握りしめる。
「…なんで今そんなこと言われなきゃなんないの」
「麻衣は言っちゃ悪いけど、クラスメイトから屋上に逃げてきてるようなもんでしょ。俺は今年で卒業だし、そろそろちゃんとクラスに馴染んだ方が良い」
いやいやいやいやいや。
ちょっと待ってよ何言ってんの、と口をパクパク開けたものの、声が出ない。
確かに三木先輩の言ってることは間違いではないけど、一番の理由はそれじゃ無いんだってば。
しかも結構真顔だし、この人本気でわたしがそれだけの理由で屋上と先輩に執着してると思ってんのかな。だったら嫌だな、泣けるなっ。