好きな人は、
今日は一人かー、と思いながら所々ある蛍光灯の光を頼りに昇降口を出る。
薄気味悪くて更に歩く速さを速めたあたしは、校門の辺りをうろつくひょろりと長い影に気付かなかった。
「なつこちゃん!」
「うわあああああ」
口から飛び出したのは、女らしさの欠片もない大きな叫び声。我ながらドン引き。
そんなあたしの目の前で口をポカンと開けて立っているのは何の罰ゲームか、すきなひと。
…穴があったら埋まりたいです。
「ご、ごめんね驚かせて…」
「……ううん、多分あたしの方が驚かせちゃったよね。」
普通、女子って驚いたら「キャッ」とかだよね。なんだろう、「うわあああああ」って。火曜サスペンスの序盤ですか。
「潤くん、何でこんな所に立ってるの。」
コホン、と咳払いして彼の顔を見上げると、ハニカミスマイルを向けられた。まっ、まぶしい。
「教室電気点いてたから、待ってた。」
「…へ?誰を?」
「なつこちゃんを。」
一緒に帰ろうと思って、と恥ずかしそうに笑う潤くん。
どどどどどどうしよう、嬉しすぎる。