好きな人は、
かなり省きながらではあるけれど一通りの説明を終えるとずずず、と首をすくませ、寂しさから逃れるようにギュッと膝を抱えた。
沢村さんはそんなわたしを小首を傾げながら見つめ
「池内さんって、変わってるよね」
柔らかな、苦笑した表情でわたしを見た。
「えっ、なんで」
「だってあたし達今日始めて話したのにさ、こんなに話してくれるから」
「………」
「それに、好きな人に日常的に"好き"なんて普通言えないよ。その先輩が本気に思えないのも分かるなー。」
「……………うそ」
ガーン、と脳内に鈍い音が響く。
貴重な客観的意見は、わたしのネガティブに追い討ちをかけ。
そうなのか…と今にもコテンと横に倒れそう。
「でも…今やめちゃったら、一生伝わらないままだよね」
ボソッと。
付け足しのように言われた言葉は、重かった。
「池内さんって、もしかしてお昼ご飯その先輩と食べてる?」
「…え、うん」
「やっぱりー。池内さん昼休みになると嬉しそうな顔で教室走って出るから。」
え、わたし顔に出てたの。
うわー恥ずかしいな。端から見たら一人でにやけてる変態だよ。
思わず顔を両手で覆うと、沢村さんの笑い声が聞こえた。
…なんか、友達ってこんな感じだったなぁ。
三木先輩といるときの幸せとは少し違うけど、幸せだ。
「ねぇねぇ、いつもどこで食べてるの?」
ニヤニヤしながら詮索されるこの感覚も含めて、嬉しい。
三木先輩と距離を置いたから、神様が心配して沢村さんと会わせてくれたのかな。
ありがとう、神様。
目の前の彼女に、幸せを分けて貰えたような気がするよ。
でも
「屋上だよ。」
わたしが答えると、彼女の表情が一気に曇った。