好きな人は、



意味が、わからなかった。








沢村さんの話はこうだった。






昨日の朝のホームルーム。


三年生の中で煙草を持っている人が見つかって、急遽持ち物検査。






その際、立入禁止の屋上の鍵が三木先輩のカバンから見つかり、指導室に連れていかれ。





鍵を管理する用務員さんの証言から、一年以上に渡って無断でそれを拝借していたことがバレたらしい。

用務員さんは、職員の誰かが持ち出していたと思っていたらしいけど。






それに加え校則違反の髪型や服装についても同時に指摘され、昨日の昼、処分が下るまでの自宅謹慎を言い渡されたらしい。
















びっくりした。

嘘だと思った。






でも、そうなら辻褄が合うことが複数ある。








昨日先輩が屋上に行かずに非常階段に留まったのは、鍵が無くて入れなかったから。




目立たない格好で目立たない場所で会ったのは、謹慎中で他人と顔を合わせるのを避けたから。





服装が変わったのは、家に帰らざるをえなかったから。






学校にいないのは、居られないから。







「…か、帰るね………!」





無意識に、咄嗟に立ち上がる自分。
机にガタガタと当たりながら、教室を飛び出ようとしたとき。






「また、話聞くよ」




あたしで良かったら、と沢村さんが手をヒラヒラと振ってくれた。







廊下を走りながら、三木先輩に何度も何度も電話をかける。






無感情な留守電サービス案内の声しか聞こえないけど、粘り強く何度も何度もリダイヤル。






出るまでずっと、かけてやる。



100万回でも、1000万回でも。






< 68 / 108 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop