失恋オブリガード
「彼女は元気?」
「今は違う女の話すんなよ」
現在、21時30分ちょっと前。
そう言って抱き合う男女の姿を目にしたのは、行き慣れた恋人の家に向かう道の途中。
私がいつも近道として通る、人目のつかない廃れた公園だった。
あぁ、最悪なものを見てしまった。夢なら今すぐ覚めて欲しい。
なんて思って頬をつねろうとしたけれど、身体中が石像のように動かない。瞳だけが、彼らの姿を捕えて挙動不審に揺れる。
どうして私はここにいるのか。
思い返すは、今日の出来事。