失恋オブリガード
朝目覚めると、君は既に隣にいなかった。
6時にセットしていた目覚まし時計を叩いて体を起こすと、まだ疲れは取れていないと実感する。
慣れてしまった3時間睡眠は、まるでおばあちゃんだ。
「……イイ匂い」
香ばしい魚の匂いと、優しいお味噌汁の匂いが鼻を掠める。
それに誘われるようにして、フラフラとリビングに向かった。
「あ、おはよう」
キッチンに立っているのは、きっと私よりも寝ていない彼。
早く顔洗っといで、なんてお母さんみたいなことを言う。
言われるがままに冷水で洗顔をして目を覚まし、2人で小さなテーブルを囲んだ。
「龍平、いつ起きたの?」
「ちょっと前やで」
優しい笑顔でご飯を一口、彼はそんな嘘を言う。
それとも彼の"ちょっと"の基準が変わってるだけか。
朝食準備するのも洗濯機回すのも、そんな"ちょっと"の時間じゃ出来ないでしょ。
そっか、なんて言いつつも心に何か引っ掛かる。