失恋オブリガード
「もう、今の仕事やめようかな」
帰り道、急に雨が降った。
聞いてないよって呟きつつも、そういえば最近天気予報見てないなぁ、なんて。
びしょびしょになって帰ったら、バスタオルを持った龍平が玄関まで走ってきた。
頭をガシガシと拭いてくれて、風邪ひくで、なんて優しい言葉。
私の心配なんてしなくて良いのに。私なんかに振り回されてる龍平の方が、心配だ。
今日もまた起きてたんだね。もう1時なのに。
ごめんね、眠らせてあげられなくて。
そして、
「…もう、今の仕事やめようかな」
優しさに耐えきれなくて、咄嗟に出てきた言葉がコレだ。
彼の手の動きがピタリと止まる。
「…何言うてんの?」
ポタポタと、私の体から滴る雨が玄関にシミを作っていって。
次第にそれは目からも溢れた。
「…私…もう……分かんないよ……」