嘘でもいいから


洋服を見たり、小物を見たり。


お昼は、彼が知っているイタリアンで軽く食べた。


その時だけ、心の奥がちくりと痛むのは、気のせいだと言い聞かせて。












彼の前だけでは、笑っていたいから。






坂の多い渋谷は、ヒールだと歩きにくくて、疲れやすい。


「大丈夫?疲れたらいつでも言って」


たびたびそう声をかけてくれる彼の言葉に、


私はもっと彼の言葉が聞きたくて、


「まだ大丈夫」と微笑み返す。


それにつられるかのように、彼がふっと笑って、


ほんの一瞬だけ、私の額に口づけを落とす。


「無理したら許さないから」









それは反則。


好きって気持ちが抑えきれなくなりそうになるから。


今すぐ、今すぐ。













「じゃあ、また後で、暗くなったら同じように聞いて」


甘い吐息を混ぜあわせながら、背伸びをして彼の耳にささやく。


それと同時に、彼の手が私の腰へと回された。







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