嘘でもいいから
2
洋服を見たり、小物を見たり。
お昼は、彼が知っているイタリアンで軽く食べた。
その時だけ、心の奥がちくりと痛むのは、気のせいだと言い聞かせて。
彼の前だけでは、笑っていたいから。
坂の多い渋谷は、ヒールだと歩きにくくて、疲れやすい。
「大丈夫?疲れたらいつでも言って」
たびたびそう声をかけてくれる彼の言葉に、
私はもっと彼の言葉が聞きたくて、
「まだ大丈夫」と微笑み返す。
それにつられるかのように、彼がふっと笑って、
ほんの一瞬だけ、私の額に口づけを落とす。
「無理したら許さないから」
それは反則。
好きって気持ちが抑えきれなくなりそうになるから。
今すぐ、今すぐ。
「じゃあ、また後で、暗くなったら同じように聞いて」
甘い吐息を混ぜあわせながら、背伸びをして彼の耳にささやく。
それと同時に、彼の手が私の腰へと回された。