嘘でもいいから
3
薄暗い部屋の中、二人きりだけの瞬間。
胸の中に顔を埋めて、一定のリズムを刻む彼の胸の鼓動を聞きながら、
髪をなでる彼の手の感覚を楽しむ。
このまま、ずっとこのままでいられれば良いのに。
だけど、
私は気づいている。
彼の目線の先が、ベッドの隣に置かれたデジタル時計にあることを。
薄暗い部屋に浮かび上がる蛍光色の時間。
それがもっと進めば、
もう彼は帰らなければならない。
―――私の手を握って、私の体を愛して、私の髪を撫でる左手の薬指に光るモノの先へ。