誠-変わらぬ想いの果て-
「それで死んだ人間がいるようね。人間と人間のいざこざなのに私が出向かなきゃならないなんて」
「妖絡みじゃないのか?」
「違う。妖だったら自分で呪うなり祟るなり始末つけるよ。そんなまどろっこしいことせずに」
奏はハアッと深いため息をついた。
空は快晴だが、奏の心は曇天だ。
「どういう仕事内容なんだ?」
今まで黙って話を聞いていた斎藤が口を開いた。
確かに、人間同士ならば元老院は不干渉のはず。
奏に仕事が来たとはどういうことか。
「その蠱毒の妖の回収、あるいは消滅。ほれ。その蠱毒に使った……犬ね。御しきれなくなっちゃったみたい」
奏が指差した所を見ると、確かにそう書かれていた。
「それってやべぇだろ?」
「新八っつぁん、あったりまえじゃん!!やべぇよ!!」
「さぁて。元はといえばそいつも被害者なわけだが?事ここにいたっては止むを得ないね」
「奏、その蠱毒でできた妖。大量生産されたみたいだよ?」
廊下の向こうから、珠樹が血まみれで歩いてきた。