誠-変わらぬ想いの果て-



「それで死んだ人間がいるようね。人間と人間のいざこざなのに私が出向かなきゃならないなんて」


「妖絡みじゃないのか?」


「違う。妖だったら自分で呪うなり祟るなり始末つけるよ。そんなまどろっこしいことせずに」




奏はハアッと深いため息をついた。


空は快晴だが、奏の心は曇天だ。




「どういう仕事内容なんだ?」




今まで黙って話を聞いていた斎藤が口を開いた。


確かに、人間同士ならば元老院は不干渉のはず。


奏に仕事が来たとはどういうことか。




「その蠱毒の妖の回収、あるいは消滅。ほれ。その蠱毒に使った……犬ね。御しきれなくなっちゃったみたい」




奏が指差した所を見ると、確かにそう書かれていた。




「それってやべぇだろ?」


「新八っつぁん、あったりまえじゃん!!やべぇよ!!」


「さぁて。元はといえばそいつも被害者なわけだが?事ここにいたっては止むを得ないね」


「奏、その蠱毒でできた妖。大量生産されたみたいだよ?」




廊下の向こうから、珠樹が血まみれで歩いてきた。



< 122 / 254 >

この作品をシェア

pagetop