誠-変わらぬ想いの果て-
―――5分後
「ねぇ、僕、あと1分って言ったよね?何で5分もかかってんの?」
胸のポケットから懐中時計を取り出して、レオンはにこりと微笑んだ。
じゃあ、お前もやれよ、とみんな思った。
思ったが口には出さなかった…出せなかった。
「よし、お前はポチだ」
こちらには馬鹿がいた。
妖の親玉、犬の妖の頭をかいぐり回し、満足げに似合わない名前をつけている馬鹿……カミーユが。
「お前正気か?」
今まで鷹と一緒に女の側にいたセレイルが、冷ややかな視線をカミーユにぶつけた。
「失礼な。私はいつでも正気だ。連れて帰って使い魔にしようかと思って」
正気な奴はこれほど負の感情に飲まれた妖を飼い馴らそうとはしない。
「澪ちゃんがいるから元老院には入れないでよ」
「分かってるさ。なぁ、ポチ」
「ポチはやめろよ、ポチは」
永倉の呆れた言葉に、みんなは深く頷いた。
そこら辺の野良犬に名前を与えるのとは訳が違うのだ。
グルルルルッ
しかも全く懐いていないし、敵意すら見せている。
牙なんか丸見えだ。