誠-変わらぬ想いの果て-
「……うぅっ。わ、分かった!!分かったから!!着るから、もう泣くな」
「奏ちゃん、二言はないよね?」
「鬼に二言はない!!」
そう言うと、先程まで涙を流していた筈の響が顔を覆っていた手を退け、満面の笑みを浮かべた。
謀られた…そう気づくのに時間は必要なかった。
おそらく、今の涙は目薬か何かだろう。
そもそも、沖田が聞いた時点でおかしいと気づくべきだった。
響の涙に気が動転して、そのことにまで頭が回らなかったのだ。
つくづく自分の口が恨めしい。
「奏、ありがとうございます!!それと……騙してごめんなさい。奏の着飾った姿をどうしても見てみたくて」
響にそう言われれば、怒りも消えてしまうから不思議だ。
他の奴ならこうはいくまい。
「………はぁ。もういいよ。いいですよ、好きにして下さい。鬼に二言はないですからね」
首謀者の珠樹、そして共犯者のミエと沖田は満足げに頷いていた。
そしてまた振り出しに戻り、奏のドレス探しが始まった。