誠-変わらぬ想いの果て-
「……あれは……そう。まだ澪ちゃんが生きていた頃です」
奏は記憶を掘り起こそうと、目を細めた。
「澪ちゃんが猫が欲しいと、珍しくねだられたんです」
「猫?」
「はい」
猫をねだるなんて、さすが子供。
可愛らしいことだ。
だが、奏の顔は次第に曇っていった。
「それを聞いたカミーユ…様が、ならば、と。捕まえてきて」
「捕まえて?野良をか?」
山崎の疑問の声に、奏はゆるゆると首を振った。
まさか、盗ってきたとでも言うのか。
元老院で一つの課を任されている男が。
奏は鼻で笑い、言葉を続けた。
「鵺ですよ」
『鵺?』
「鵺は妖だよ。色んな動物の体をくっつけたような姿をしてるんだ」
珠樹がそんなことも知らないのかと、みんなに自慢げに話した。
「カミーユ…様は、鵺は四足歩行だし、強いし、面白いし、澪ちゃんが飽きたら私にくれ、と………」
最初の四足歩行しか猫との共通点がないのは何故だろうか。
明らかに自分の方が欲しかったはずだ。