誠-変わらぬ想いの果て-
「………奏」
「お前は………」
『また一人になる』
黒いモノが、奏の心に覆いかぶさった。
「一人?」
「そう」
「でも……みんなは一緒にいてくれる」
「人間とはいつまでもはいられないわ?」
「た、珠樹が……」
「珠樹も好きな女性ができたら、夫婦になるだろう」
「結局、あなたは一人なのよ」
「だから、さぁ。一緒に」
『行こう?』
奏の心が、四肢が、完全に絡めとられた瞬間だった。
常時ならば気づけたはずの両親の不審さに、黒きモノに捕われた奏は気づけなかった。
瞳が精彩を欠き、虚ろに変わっていく。
二人はゆっくりと口の端をゆるゆると上げ、そんな奏を見つめていた。
あと少し、あと少しで……あの方の元に…、と小さく呟きながら。