誠-変わらぬ想いの果て-
「か、なで……」
「お前…」
「また……」
元老院の敷地以外ではいかなる者でも彼らに傷一つつけられない。
しかし、元老院の中では。
人間は人間のくくりに入れられたままだった。
「奏…ふざけ……」
最後まで土方は眠気と戦っていたが、ぱたりと頭を伏せてしまった。
奏はそれを見てフッと笑った。
「……か、なで…」
自分の名を呼ぶ声に、いささか驚きの表情で声の主を見る。
ベッドの縁に手をかけ、こちらを上目遣いのようにして見てくるのは響だ。
「奏、行っちゃ駄目です」
「響……。そっか。結界、張れるようになったんだ」
「え?」
本人は無自覚のようだが、響が纏う気は確かに奏や珠樹が結界を張る時のものによく似ている。
ただ、できるようになったのが最近なのか、今のは火事場の何とやらでできたのか、奏の術全てを無効にするには脆弱過ぎた。